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2010年10月25日

『心に残る思い出の1冊』(情報マガジン Vol.312 2010年11月号より)

内容

 “読書の秋”ということで、先日近所の図書館に行ってきました。特に、お目当ての本があるわけではなかったので、いろんなコーナーをまわっていたのですが、子ども向けの広場で、1冊の絵本が紹介されていました。イラストの入った大きな画用紙を目にした瞬間、私にはそれが何の本だかすぐに分かりました。
『さっちゃんのまほうのて』、ご存知の方も多いのではないでしょうか。先天性四肢欠損という障がいを負って生まれたさっちゃんが、自分の障がいと向き合いながら成長していく様子を描いたものです。私が初めてこの絵本と出会ったのは、5歳の頃だったと思います。保育園の本棚には、かわいいキャラクターが表紙を飾る絵本がたくさんありましたが、そのなかで、この本だけは少し雰囲気が違っていました。涙を浮かべながらじっと見つめる少女、その姿に惹き付けられるように、私は本を手にとっていました。
 主人公であるさっちゃんは、指がないという理由から、幼稚園で「ままごとあそび」のお母さん役をさせてもらえませんでした。私が“障がい”という言葉を意識したのはこの時が初めてだったように記憶しています。難しいことはよく分かりませんでしたが、さっちゃんのようなからだで生まれる人もいること、みんなと違うからだで生まれると、仲間外れにされること、このふたつだけは心に深くやきつきました。その後、障がいを持つ人に出会うたび、決まってさっちゃんの涙を思い出すのです。
このように、胸がしめつけられる場面の多い絵本ですが、卒園するまで何度もくりかえし読みました。なぜかというと、さっちゃんが家族との絆から自分の手を受け入れ、今度は、そんなさっちゃんを幼稚園のお友達も受け入れるようになるからです。さっちゃんに向けられた両親からのメッセージ、お友達の小さな行動が、とてもあたたかく胸にジンときます。きっとそんな場面から、子どもながらにいろんなことを感じていたのでしょう。“読書の秋”ということで、私の思い出の1冊をご紹介させていただきました。(もりた/ボラセンジャー・スイートオレンジ/September .28.2010)

◆ちよだボランティアセンター情報マガジン「ボランティア」
 Vol.312 2010年11月号(2010/10/23発行)より

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